炎症性腸疾患(IBD)について

大腸や小腸など、人間の消化管粘膜に原因不明の慢性的な炎症や潰瘍を引き起こす病気の総称を「炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)」と呼びます。

この疾患は主に、大腸の粘膜を広範囲に侵す「潰瘍性大腸炎(UC)」と、口から肛門にいたるすべての消化管に連続性・非連続性の病変を作る「クローン病(CD)」の二つに分類されます。いずれの疾患も、激しい腹痛が続いたり、慢性的な下痢が止まらなくなったり、時には血便や発熱、体重減少などを伴うなど、患者様の日常生活やQOL(生活の質)に大きな影響を及ぼします。

1.炎症性腸疾患(IBD)の特徴と難病指定について

炎症性腸疾患(IBD)は、現在の医療技術をもってしても「完治(根本的な治療)」が難しく、発症の正確な原因も完全には特定されていないため、厚生労働省より「指定難病」に登録されています。発症原因には、遺伝的な要因、食生活や衛生環境などの環境要因、そして腸内細菌のバランスの乱れなどが複雑に絡み合い、最終的に腸管の免疫システムが異常を起こして自身の粘膜を攻撃してしまうこと(免疫異常)が深く関係していると考えられています。

IBDの大きな特徴は、激しい症状が現れる「活動期」と、適切な治療によって症状が一時的に落ち着く「寛解(かんかい)期」を何度も繰り返す点にあります。一度発症すると、多くの場合は一生にわたって病気と上手に向き合い、コントロールしていく必要があります。しかし、「難病だから治らない、一生苦しまなければならない」というわけではありません。適切な診断と専門的な治療を継続すれば、多くの患者様が寛解状態を長く維持し、健康な人と変わらない就学・就職・結婚・出産などの日常生活を送ることが可能です。

2.注意すべき「炎症性発がん」と大腸がんのリスク

炎症性腸疾患、特に病期が長期に及ぶ潰瘍性大腸炎(全大腸炎型など)や大腸に病変を持つクローン病の患者様において、最も警戒しなければならない合併症の一つが「大腸がん」のリスク上昇です。

一般的な大腸がんは、良性のポリープ(腺腫)が徐々に大きくなってがん化するケース(腺腫-がん経路)が大半を占めます。しかし、IBD患者様に見られる大腸がんは「炎症性発がん」という全く異なるルートをたどります。

炎症性発がんとは?

大腸の粘膜に何年も、あるいは何十年も慢性的な炎症が続くことで、粘膜の細胞が破壊と再生を繰り返します。この過程で細胞のDNAが傷つき、発がんを抑制するための重要な遺伝子が変異を起こしたり、機能しなくなったりすることが原因と考えられています。

特徴①:ポリープの形をとらないことが多い

一般的な大腸がんのように分かりやすい「隆起したポリープ」を作らず、平坦な粘膜や、周囲の炎症組織に紛れるような形でがんが発生(平坦・陥凹型病変)することが多いため、見逃されやすいという特徴があります。

特徴②:マルチフォーカル(多中心性)に発生する

大腸の1箇所だけでなく、慢性的な炎症が起きている広範囲のあちこちの場所に、同時または時期をずらして複数のがんが発生することがあります。

この「炎症性発がん」のリスクは、発病からの期間(罹患期間)が長くなるほど、また炎症の範囲が広く、炎症の程度が強いほど高まることが分かっています。だからこそ、症状が落ち着いている「寛解期」であっても油断せず、定期的な内視鏡検査(大腸カメラ)による監視(サーベイランス)を行うことが命を守るために不可欠なのです。

3. 川崎溝の口こぐれ大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック(旧木暮クリニック)の専門診療

「腹痛が続く」「下痢が何週間も止まらない」「便に血が混じる」「最近理由もなく体重が減ってきた」……このような症状でお悩みの方は、決して一人で抱え込まず、専門的な医療機関を受診することが最優先です。
「川崎溝の口こぐれ大腸胃食道の内視鏡・消化器内科クリニック(旧木暮クリニック)」は、炎症性腸疾患(IBD)の診断・治療、および高度な胃カメラ・大腸カメラ検査に専門特化したクリニックです。

当院の強みと取り組み

  • 苦痛の少ない高度な内視鏡技術
    IBDの的確な診断や、炎症性発がんの早期発見には内視鏡検査が欠かせません。当院では、内視鏡専門医が鎮静剤や最新の検査機器を駆使し、患者様のお体に負担のない「お腹に優しい、苦痛を抑えた大腸カメラ」を実施しています。
  • 一人ひとりに合わせたオーダーメイド治療
    5-ASA製剤といった基本薬の処方はもちろん、病勢や患者様のライフスタイル(仕事、学校など)に合わせた適切な薬物療法・栄養療法をご提案し、長期的な寛解維持を目指します。
  • 地域に根ざした「旧木暮クリニック」からの信頼
    長年地域医療に貢献してきた「旧木暮クリニック」の志を受け継ぎ、より専門性を高めた内視鏡・消化器内科として、患者様が安心して通える環境を整えています。

難病と言われると不安になるかも知れませんが、早期に発見し、正しいアプローチを行えばコントロールできる病気です。少しでもお腹の不調や異変を感じたら、どうぞお早めに当院までご相談ください。

4.【詳細解説】潰瘍性大腸炎(UC)

潰瘍性大腸炎(UC)

大腸の粘膜に慢性的な炎症が生じ、びらんや潰瘍が形成される病気です。主な症状は、血が混じっている便(粘血便)、下痢、腹痛です。炎症の範囲は大腸に限局され、その広がりによってタイプが分類されます。治療は5-ASA製剤を基本とし、効果不十分な場合はステロイドや生物学的治療薬などが用いられます。

潰瘍性大腸炎の詳細解説ページはこちら

クローン病(CD)

主に10代後半~30代の若い世代に発症しやすい病気です。潰瘍性大腸炎とは異なり、大腸だけでなく小腸を含めた「口から肛門まで」のすべての消化管に炎症や潰瘍が起こる可能性があります。腹痛や下痢のほか、体重減少や栄養障害、痔瘻(じろう)などの肛門トラブルを伴いやすいのが特徴です。治療には薬物療法のほか、食事をコントロールする栄養療法が重要となります。

クローン病の詳細解説ページはこちら

5.炎症性腸疾患(IBD)に関するよくある質問(Q&A)

Q1. 症状が治まっていれば、病院に通わなくても大丈夫ですか?
A. いいえ、症状がなくても定期的な受診と服薬の継続がとても重要です。
炎症性腸疾患は、症状が落ち着いている「寛解(かんかい)期」であっても、腸の奥では微細な炎症がくすぶっていることが多く、自己判断でお薬を止めると高い確率で「再燃(悪化)」してしまいます。また、慢性的な炎症は将来的な大腸がんのリスク(炎症性発がん)を高めるため、良好な状態を維持し、異変を早期発見するためにも定期的な通院を継続してください。
Q2. 大腸カメラ(大腸内視鏡検査)はどれくらいの頻度で受けるべきですか?
A. 患者様の状態や発症してからの期間によって異なりますが、一般的には年に1回が目安です。
初診時の診断はもちろん、治療の効果判定、そして「炎症性発がん」を早期に見つけるためのサーベイランス(監視)目的として、定期的な大腸カメラが必要になります。特に発症から8〜10年以上が経過している患者様は、大腸がんのリスクが上昇するため、主治医の指示のもとで定期的に検査を受けることが推奨されます。当院では苦痛を抑えた検査を行っておりますので、安心してお任せください。
Q3. 食事や日常生活で気をつけることはありますか?
A. 疾患や病期(活動期・寛解期)によって注意点が異なります。
  • 潰瘍性大腸炎:寛解期であれば基本的には極端な食事制限は必要ありませんが、暴飲暴食や刺激物、過度な脂っこい食事は避けたほうが無難です。
  • クローン病:腸管の狭窄(狭くなること)を予防するため、一般的に低脂肪・低残渣(繊維質の少ない)食が推奨され、栄養療法(エレンタール等の摂取)を並行することが多いです。

どちらの疾患も、過度なストレスや睡眠不足、疲労は再燃の引き金になりやすいため、規則正しい生活を心がけ、体調に異変を感じたらすぐに主治医へ相談できる環境を作っておくことが大切です。

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