ポリープ切除とは

ポリープ切除 ポリープ切除

周囲の大腸粘膜よりも内腔側に隆起したものを大腸ポリープと言います。一般的には40歳以降の方にみられ、大きさは数mmの小さなものから20mmに及ぶものまでまちまちです。
放置していても心配のいらないものもありますが、中には早期のがん、または将来的に癌化する可能性の高いポリープの場合もあり、このようなポリープは治療が必要です。また、陥凹型腫瘍の場合は、悪性度が高く5mm以下でも必ず治療が必要です。
日本では、大腸がんは増え続けており、2020年国立がん研究センターがん統計によると、大腸がん罹患数男女共に2位であり、女性ではがん死因の1位、また男性でもがん死因2位で将来的には1位の肺がんを追い越すとも言われています。しかしながら幸い大腸がんは他のがんよりも悪性度が低く早期発見できれば根治治療が可能な疾患で、早期の大腸がんであれば内視鏡で治療ができ、またがん化する可能性のあるポリープをがんになる前段階で治療することで大腸がんの予防にもなります。その為、症状が有る無しに関わらず男女共に40歳を過ぎましたら、定期的に大腸内視鏡検査を受けられることを勧めいたします。
米国National Polyp Studyより、腺腫の内視鏡切除により大腸がんは76~90%抑制可能であり、53%の死亡率抑制が得られると報告され、日本においても積極的に腫瘍性ポリープの内視鏡切除が広く行われています。

当院では、大腸内視鏡検査中にポリープが発見された場合、検査中にその場でポリープを切除する大腸ポリープ日帰り手術をしています。
日帰り手術のメリットとして、入院不要で治療可能なため、時間的・金銭的負担を伴わないで、1日でポリープの発見から治療まで終わらせることが可能です。全工程は20分から30分程で終了し痛み・腹部不快感等はありません。治療後当日はご自宅で安静にしていただき、飲酒・食事・運動・入浴サウナ・遠方への旅行等に約1週間制限をお守り下さい。主な合併症として、出血(治療した部位から血が出る)・穿孔(腸に穴が開く)がまれに起きる場合があります。合併症が生じた場合は最善の処置・治療を行います。また血液をサラサラにする薬(バイアスピリン・ワーファリン・パナルジン・プラザキサ・イグザレルト・ エリキュース・リクシアナなど)を服用している方は事前にお知らせ下さい。
尚、切除した病変は回収して、顕微鏡の検査を行い、病変の最終診断を行います。(病理の結果は7日から10日程かかります。)良性もしくは初期の早期癌の場合はこれで治療完了となります。万が一、癌がある程度が進んでいた場合、または病理診断の結果により根治の目的で手術が必要になる場合があります。
*尚、治療は日帰り治療か可能な範囲で治療を行いますので、手技上、合併症など危険性が高くなる病変に対しては検査のみにとどめさせていただく場合があります。

当院で行うポリープ切除の方法は次の通りです。

ポリペクトミー

内視鏡の先端から針金の輪(スネア)を出し、病変の根元を締め、高周波電流を流し病変を焼き切る方法をポリペクトミーと言います。形態は隆起型の病変が多くポリープの茎や起始部の径が小さなものが適応になります。時に、高周波電流による熱損傷が粘膜下の深い部分まで及ぶことがある場合があり合併症として後出血や穿孔を来たす場合があります。当院では治療後は合併症予防に切除断端を縫縮しております。

コールドポリペクトミー(10mm以下)

上記ポリペクトミーを高周波電流流さないで切除する方法をコールドポリペクトミーと言います。大きさ10mm未満の小さな良性の腫瘍性ポリープが適応です。ただし10mm未満であっても、形態や性状によりコールドポリペクトミーの適応にならないものもあります。ポリープ治療直後出血は見られますが自然に止血する場合がほとんどです。ポリペクトミーの合併症に比べて治療後の後出血や穿孔のリスクは少ないです。

内視鏡的粘膜切除術(Endoscopic mucosal resection: EMR)

平坦な病変や陥凹型の病変の場合、またはポリープの基部が太い病変の場合は、病変の粘膜下に生理的食塩水を注入し、粘膜を持ち上げてスネアを病変にかけて絞扼し高周波電流を流し病変を切除します。

合併症

コールドポリペクトミーの場合は、ポリープ切除直後に出血することが多いですが自然に止血することがほとんどです。高周波を用いた治療の場合は、まれに出血や穿孔(腸に穴が開く)などの合併症を生じる場合があります。合併症が生じた場合は最善の処置・治療を行います。状況により、関連施設に入院、治療、緊急手術が必要になる場合もあります。過去の全国集計では、合併症の頻度は0.139%です。

治療の費用

1割負担の方 2割負担の方 3割負担の方
大腸ポリープ治療
(細胞検査も行った場合)
約7,000~12,000円 約14,000~24,000円位 約20,000~35,000円
超音波検査
(胸腹部)
約800円 約1,600円 約2,400円

術後の注意事項

治療後当日も自転車・バイク・自動車など、自分で運転はできません。
検査後は脱水予防に水分をしっかり取るようにしてください。
また、大腸ポリープ治療後の約1週間は、消化の良い食事(辛いものと刺激物は避けてください)を召し上がっていただきます。
尚、大腸ポリープ治療後の約1週間は、ごくまれですが、時に出血・遅発性穿孔(腸管に穴が開く)を起こす合併症の可能性が有るため、合併症予防の為にも下記の事項も1週間お止めください。

  1. 1) 飲酒(ノンアルコールビールも禁止です)
  2. 2) 運動、重い荷物を持つことなど腹圧のかかること
  3. 3) 遠方への旅行(東京・神奈川県外)
  4. 4) サウナ温泉長時間の入浴

用事等があって上記事項が不可能な場合は、日を改めて内視鏡治療を行いますのでご承知ください。切除後2-3日はその後のフォローのため当院に来院していただくこともありますのでご承知ください。万が一、大腸ポリープ治療後に、持続的な出血、発熱、腹痛等の異常な症状が出現した場合は当院または提携医療機関に早急に御連絡ください。尚、後出血が疑われる場合は当院で内視鏡による緊急止血術も考慮し、状況によっては提携病院に入院(原則として1泊入院)していただく場合もありますのでご承知ください。
大腸ポリープ切除は生命保険の内視鏡手術に相当します。手術費用給付の対象になることがありますので、治療後にご加入の保険会社にお問い合わせください。