ピロリ菌とは

ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)は、体長約1000分の4mmのらせん形の細菌で胃の粘膜に生息してます。ちなみに胃の中は胃酸によって強力な酸性下の状態にあるので、以前は胃の中で細菌は生存しにくいと考えられていました。しかしながら、この強酸の環境下でピロリ菌が生息できるのは、ピロリ菌が胃酸を中和するウレアーゼという酵素を持っているからです。ピロリ菌はこの酵素で胃酸を中和させながら胃の中で生存し続けることが可能になります。
ちなみに、ピロリ菌の感染経路は、飲み水や食べ物を介して口から細菌が入ることで感染するのではないかと考えられてます。日本人の場合は、高齢者ほどピロリ菌に感染している割合が多く、その原因として衛生環境が整わなかった時代井戸水などを介して感染したと考えられてます。現在は衛生環境が整ってますので若い世代のピロリ菌感染率は低くなっています。
尚、ピロリ菌に感染したとしてもすぐに何らかの症状がみられるわけでなく、無症状の状態が続くこともよくあります。ただ感染が持続していくことで、やがて胃粘膜に炎症が起き、この炎症が長期に持続すると萎縮性胃炎、胃・十二指腸潰瘍、胃がんといった消化器疾患のリスクが高くなります。そのため、ピロリ菌の感染が疑われる場合は、ピロリ菌感染の有無を調べる検査を行っていき、万が一、感染が判明した場合は積極的に除菌することが推奨されます。
検査について
ピロリ菌感染の有無を調べる検査としては、内視鏡を使用する検査と内視鏡を使用しない検査の2種類あります。それぞれ主に3つの検査方法があります。その内容とは次の通りです。
尚、胃内視鏡検査で慢性胃炎と診断された場合は保険適応になります。
内視鏡を使用する検査
検査の方法としては3種類ありますが、いずれにしても胃粘膜の一部組織を内視鏡で採取していきます。
培養法 |
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ピロリ菌を培養させていく方法で、判定結果が出るまで時間がかかります(長い場合は1週間程度)。 |
鏡検法 |
採取した組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を調べます。 |
迅速ウレアーゼ試験 |
ウレアーゼの活性を利用して調べる方法です。短時間(2時間程度)で結果が判明します。 |
内視鏡を使用しない検査方法
尿素呼気試験 |
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吐いた息の中に含まれる炭酸ガスの量を測定し、ピロリ菌感染の有無を調べます。これはピロリ菌がウレアーゼによって胃酸を中和させる際に二酸化炭素とアンモニアに分解します。その二酸化炭素の量を計測します。精度が高い検査となります。 |
抗体測定 |
血液や尿を採取し、そこに含まれる抗体の有無で(陰性か陽性の)判定をしていきます。 |
抗原測定 |
糞便を採取し、その中にピロリ菌抗原があるかどうかを調べる検査になります。 |
除菌治療について
ピロリ菌検査の結果、陽性であるとの判定を受けた場合は、速やかに除菌治療(薬物療法)を行うようにしてください。これにより萎縮性胃炎、胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃MALTリンパ腫、の治療および予防にもなります。
ピロリ菌の除菌療法は、1週間限定でプロトンポンプ阻害薬(あるいはボノプラザン)、アモキシリン(抗菌薬)、クラリスロマイシンを服用していきます(一次除菌)。除菌治療が終わったら1ヵ月後(当クリニックでは正確な判定のために2ヶ月後)に再び検査を行います。その結果、除菌に失敗した場合は二次除菌となります。再度1週間限定の薬物療法となりますが、その際はクラリスロマイシンをメトロニダゾールに変えて、3つの薬剤を服用していきます。また除菌治療を終えた1ヵ月後(当クリニックでは2ヶ月後)に再度検査をします。ちなみに除菌成功率につきましては、1次除菌で約70~90%、2次除菌で約80~90%となっています。これらで除菌できなかった場合、3次除菌も可能ですが、保険適用外となります。
なお薬物療法の期間中は副作用が現れることがあります。主な症状は、軟便・下痢、出血性大腸炎、味覚異常、かゆみ、発疹などです。